【貿易実務】通関業者じゃない人が通関士を持つメリット

1.はじめに(通関業者じゃない人の通関士のメリット)

「通関士でも勉強しようかな…」
石油業界に身を置くMさんがそんなことを口にした。
Mさんは、通関業者でも、ましてや商社や物流業者に勤務しているわけではない。
それでも「通関士」に関心があるのは、仕事柄、原油の輸入に関して、通関業者や税関との接点があるため。つまり社内において「貿易」や「通関」に一目置かれている存在である。
「餅は餅屋」というけれど、貿易立国の日本において、メーカー勤務が通関士にチャレンジするメリットは大いにある。
・メーカーならではの「輸入原料」のコスパ
・メーカーならではの「輸出製品」のストレスフリー
・社内における「貿易エキスパート」のユニークな存在
これらの理由を深堀りして、通関業者・商社・物流会社ではない人にとっての通関士を持つことのメリットを紹介していく。

2.原料輸入の実務に通関士は役立つ

自社で製造する製品にどんな輸入原料品が必要であるか。
これは、メーカーさんの強味がいかんなく発揮するところである。
細かい通関手続きは、通関業者に任せるとして、それでもなお、原料について、通関業者側から「問い合わせ」があることが多々ある。
通関士を勉強することで、この「問い合わせ」の真意がわかることがある。
通関手続きは、きちんと法律や通達の「根拠」によってなされている。
だから、こうしたルールを先に知ることで、原料を輸入する場合の「問われていること」を理解することで、煩雑な輸入のリードタイムが削減できる。
輸入品については、品目ごとの「関税分類」によって適用される税率が違ってくる。
また、「原産地規則」や「関税評価」といったルールによって、適用される税率が変わってきて、原料コストに跳ね返ることができる。
また、注文した品物と異なるものが輸入された場合、「違約品輸入における還付手続き」を申請できる場合があり、各種、減免税制度をふまえて、輸入に際して「より安く、お得に」輸入できる場合がある。
こうしたことは知っていて損はない。
ただやみくもに制度を学ぶより、きちんと「通関士試験」といった資格勉強に則した「学習」をすることで、輸入原料のコスパを図ることができる。
特にメーカーの場合、自社で製造する「製品」に明るいのでは、これは、通関業者等には無い「強み」であり、商品に詳しいメーカーの人が「通関士」を取得するメリットが大いにあり得ることである。
通関制度について、勉強しなければいけない立場にある人なら、通関業者でなくとも「通関士」の取得をおすすめしたいのはココにある。

3.製品輸出の実務に通関士は役立つ

原料を輸入し、自社で製造、それを海外に向けて輸出する、ということがあるだろう。
輸出の場合、輸入と違って「関税」を支払うことはない。
けれども輸出貿易管理令といった細かいルールがある。
通関士を学ぶことで、こうした輸出に際してのルールに強くなること請け負いである。
特に最近は、「経済安全保障」という考えが重視されつつある。
平たくいえば、自社で製造した機械などが、輸出先で「武器・兵器」に使われては問題になる。こうしたことを未然に防ぐてめに、特に機械などの輸出製品には、慎重な姿勢で臨まないと、思わぬルール違反に陥りかねない。
輸出通関に際して、通関業者から製品についての詳細を問われることがあるが、これも輸入と同様、どういう根拠に基づいて、説明を求められているのか事前に知っていることによれば、すんなりと事が進み、総じて、リードタイム(出荷から船積みまでの時間)を削減できるなど、メリットが多い。
製品の知識のあるメーカーの人が「通関士」を持つことで、鬼に金棒。
通関業者や税関が「求めていること」がわかるというのは、メリットがある。
メーカーといえども、貿易の一翼を担う立場にあるため、通関業者が言っていることを理解するためにも、「通関士」という資格を目指すことで、仕事をとおして「見識」を広めることができる。

4.まとめ(通関業者じゃない人にも通関士はおススメする理由)

「通関士の資格を持っている人と、そうでない人の発言は、通関業務に関して、発言の重みが違う」
通関士に合格するためには、ある程度の勉強が必要である。
「通関士試験に合格したい」という気持ちが何より大切だし、ある程度の勉強(専門書、参考書の購入や過去問題のチャレンジ)は必要不可欠である。
だからこそ、「通関士試験」の重みがある。
資格はすべてではないが、持っていて損ではない。
それが「通関士」である。
どうせ貿易業務に関わる仕事をしているのならば、通関士をチャレンジしてみる価値はある。
通関業者でない者が通関士を持つことで、会社から「一目置かれた存在」になることであり、ひいては、自分自身をユニークな存在として知らしめる絶好なアピールにある。
また、昨今のグローバル社会やWEB社会の進展により、通関士試験の持つメリットも変化しつつある。
メーカーといった貿易関係企業以外にも、インターネットを活用した個人輸出入を営む人も多い。こういう場合も通関士の知識を生かすことができる。
会社に頼る生き方としての通関士はもちろんのこと、副業や退職後を見据えての勉強も、動機づけのひとつであろう。
「置かれた場所で咲く花」のように、通関業者はもちろん、通関業者じゃない人にとっても通関士のメリットは大いにありそうだ。

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