(はじめに)AI到来で通関士はオワコンか?
今後、人工知能(AI)技術が進むにつれて「士業」の将来が危うくなっています。
通関士の将来性はどうでしょうか?
今さら、通関士の資格を取ったところで役立つでしょうか?
結論からいえば、通関士は仕事のやり方は変わるでしょうけれども、そもそも、機械化に取って代わるようなことはありません。
むしろ、法務やコンサルティング的な能力が必要なため、AIに取って代わることのない、「伸びしろ」が多い資格です。
かといっても、「通関士」を取得したからといって、それにあぐらをかいてはいけません。通関士は、英語(TOEIC)、パソコン(MOS)といったスキルとの関連が不可欠です。ここでは、通関士の将来性について、私なりの考えをまとめておきましょう。
1.物流業界の人材不足と通関士
まず、通関士が身を置く物流業界(ロジステックス)には、慢性的な人材不足ということがあります。単に「トラック運転手が不足している」というだけの話ではありません。将来的には、自動運転技術によって運転手不足は解消させるでしょう。
ただし、いくら物流のハイテク化といっても「貨物そのもの」は、バーチャルというわけにはいきません。
日本が貿易立国である以上、貨物(品物)は、国境を超えることになるので、そんな時、手続きに長ける通関士の出番です。
これまで通関士といえば、通関業者に身を置き、輸出入者に代わって、税関に通関書類を提出し、許可や承認を受ける、というのが典型的な仕事でした。
最近の潮流として、製造メーカーや小売り業界での物流コスト」を意識するようになり、「自社通関」への流れもあります。
通関は「通関のプロ」に任せるのも良し、また、コスト意識や危機管理から、通関を「自前」でやってしまおう、という動きもあります。
この動きは、通関士が、通関業者の枠にとらわれず、多種多様な業界から「ひっぱりだこ」という状況になりつつあります。
だからこそ、通関士は、取得していて「損」はない資格です。
どちらかといえば、マイナーな資格でありますが、きちんと対策を取れば、独学でも取得可能な資格です。持っていて「損」ということはないでしょう。
2.IT化・AI時代と共生する通関士
通関士は、輸出入者に代わり、税関に輸出入申告を行う業務をメインとしています。
(他にも、輸出入申告に付随する業務もあります)
輸出入許可を行うのが税関ですから、輸出入者と税関の仲介を担う技術が必要となります。
貿易ルールは、毎年のように変わるので、その度にフレキシブルな対応が求められます。つまり、輸出入者の意向、税関への対応、国際貿易の動向など、幅広い知識が必要で、輸出入者と官庁を結ぶ「コンサルティング的」な要素が必要です。
こうした交渉は、AIは苦手であり、まだまだ人間が活躍する余地があるといえそうです。
もちろん、通関士になったからといって「将来は安泰か」といえば、そうとはいいきれません。
常に世の中の動きを察知して、新しいことを吸収し、挑戦し続ける姿勢が大切です。
3.スモールビジネスの流行と通関士
貿易統計によれば、輸出入申告件数は、右肩上がり。今後もこの傾向はつづきます。
日本では経済活動が停滞している中で、どうして輸出入件数の伸びが大きいのでしょうか。
現認のひとつと考えられているのが、インターネットを介した貿易取引の小口化(国際宅配業や個人国際通販)が伸びが著しいといえます。
Eコマース(電子商取引)のプラットホームが整い、誰もが、貿易実務のプレーヤーになる時代がやってきました。
そんな世の中だからこそ、貿易のプロとしての「通関士」の存在が、ますます必要とされます。
通関や関税納付の「基本的なルール」を知っているからこそ、Eコマースでのトラブルにも敏速に対応し、結果として、ビジネス面において、信頼される存在になれることでしょう。
貿易取引の小口化とは、ひいては、あなた自身が、通関手続きのみならず、輸出入社となって、越境貨物取引ビジネスにかかわっていくのも夢ではありません。
貿易関係の国家資格である「通関士」を学ぶことによって、就職や転職に有利になり、将来的には、独立・起業の夢を持つ。
資格の勉強は、その動機づけが必要です。
単に会社から言われたので仕方なく勉強するのではなく、通関士を武器として、有利な転職先や将来の独立や起業の夢を見据えて、学習に励んでききましょう。
4.まとめ(やはり通関士を目指そう)
これから通関士を目指したい人へのアドバイス。
今は時代の節目に入っています。
IT化、AI技術、インターネット整備、Eコマース決済など、考えようによっては、通関士にとっては、向かい風とも追い風とも、どちらともいえない風が吹いています。
その風を自分のモノにしましょう。
「通関士さえ持っていてれば、食いっぱくれがない」
そんな時代ではありません。
勉強は一生続くものです。
通関士を目指したなら、英語やパソコンの資格も併せて挑戦しましょう。
貿易業界のみならず、ビジネスを身を置く者としての、専門知識である「通関士」とともに、一般教養である英語(TOEIC600点)、パソコン(MOSのワードとエクセル)を持てば、鬼に金棒です。
(ここだけの話ですが、実はTOEIC600点やMOSのワードとエクセルは、それほど難関資格ではありません…。ですので、、ぜひ、併せて挑戦することをおすすめします。)
「貿易×英語×パソコン」の三乗スキルで将来の不安を吹き飛ばしましょう。