宅建士と物流業界は至福なコラボ
物流不動産とは、倉庫を必要とするユーザ人と、倉庫スペースを貸したいオーナーを結びつけるマッチングビジネスである。
鈴木邦成、大谷厳一共著の「すぐわかる物流不動産(増補改訂版)」(白桃書房)に詳しい。それまで別立てだった「不動産業」と「物流業」の垣根を超えた融和ビジネスである。
要するに、物流業界に身を置く人も、これからは、不動産知識も必要であるから、「宅建士」を取って、不動産業界に関心を持とうという発想である。
兼ねてより、私は、英語と貿易実務と不動産の資格のマルチ取得を進めていたが、「国際物流倉庫」は、まさに、三つのジャンルの中心軸になる。
1.物流従事者は宅建を取ろう
物流業界にとって必要なものは、トラックと倉庫である。
トラックに関しては、ドライバー不足とAI技術に進展による「自動運転」の進展が、どれだけ進むかわからないが、世間の関心も多い。
一方、倉庫(不動産)であるが、これに関しては、AI技術が取って代わるようなことは当面難しいかもしれない。
AIやIT技術を駆使して、倉庫内作業の効率化、自動化に関しては、ある程度、進むかもしれない。けれども、どこに巨大倉庫を設置するとか、老朽化した倉庫を、どう再開発するかに関しては、やはり「人間の英知と決断」こそが必要ではないだろうか。
倉庫(不動産)に関しては、二極化が顕著になる。
大手通販業界がテナントして活用する「巨大倉庫」、そして、再開発の波に直面する既存の「中小倉庫」に大別される。
巨大倉庫については、そこで働く人の雇用環境の改善が急務であるし、中小倉庫に関しては、再開発による、街に活性化に寄与することがあげられる。
大手デベロッパーが臨海部に設立した巨大倉庫は、そこで働く人の募集や待遇改善のため、レストランや休憩スペースを設置したり、地元地域社会に受け入れるために、そうしたスペースに、一般の人々も活用できる「共生の道」を選んでいる。
また、中小倉庫に関しても、アトリエ、カフェ、ライブハウスの転用なども進んでいる。もちろん公共交通機関のアクセス問題があるが、中小倉庫は、割と交通至便なところに設置しており、洒落た雰囲気と相まって、人気も高まっている。
2.物流城下町・船橋
千葉県船橋市や流山市に建設された「超大型物流施設では、まちづくりと連動した開発がすすめられ、前述の「物流不動産」の著者によれば、さしずめ「物流倉庫城下町」が形成されつつあるという。
人口減少や雇用減少で頭を悩ませる自治体が多い中、船橋市や流山市は、むしろこうした問題が改善され、人気が高い「まちづくり」の成功例といえよう。
巨大倉庫の寝室は、中小倉庫や工場の再活性化を促している。
ジェントリフィケーション(紳士化)という言葉がある。
倉庫や工場を再開発して、街の価値を創出、向上させることである。
船橋市は、さしずめ、こうした再開発を、徐々に進めていて、将来が楽しみな「物流倉庫城下町」である。
東関道、京葉道路という二大高速道路が整備され、海上貨物では、東京港や千葉港に近く、航空貨物でも、成田空港、羽田空港の「二大空港」の中間点に位置している。
雇用にも明るく、再開発も進んでいる。
船橋市の使われなくなった町工場も、地元の起業による「ワイナリー」の設立など、プロジェクトの規模にとらわれない「まちづくり」が進んでいる。
せっかくの工場跡や小規模倉庫があるのだから、積極的に、アーティストなどを誘致して、アトリエ、カフェ、ライブハウスなどに転用すればいいと思う。
3.三番瀬とららぽーと
船橋の物流倉庫城下町について、将来的には「三番瀬」と「ららぽーと周辺」の再開発が大いに期待できる。
三番瀬に関しては、東京湾に隣接した遠浅の干潟であり、「ふなばし三番瀬海浜公園」として整備されつつある。
三番瀬周辺には、廃スクラップヤードや鉄鋼バースが残っており、一方、海浜公園では、スポーツやレクリエーションが堪能できる。
カナダのバンクーバーの「グランビル再開発」を手本とした市民レベルの再開発プランもあるようだが、交通アクセスの悪さが難点である。三番瀬海浜公園のある埠頭へ行くには、「新港大橋」が唯一の手段であり、最寄駅の「二俣新町」駅からも、歩くのには不便であり、さりとてバスの便も本数が少ない。
ウワサの域だが、三番瀬周辺には、ラグビー場を建設するという話もあった。
受け皿となる「東京ベイ・スピアーズふなばし」というラグビーチーム(クボタ)もあり、アクセスが改善されれば、将来の再開発が楽しみである。
もっと計画的な海辺のリゾート開発ができないものかと思うのだが、船橋市と市川市の境界にあり、(駅は市川市、公園は船橋市)一体的なマスタープランが必要である。
もうひとつ、物流倉庫城下町の船橋として基軸となるのが「ららぽーと東京ベイ」という巨大ショッピングセンターの存在である。
ららぽーとの最寄駅の南船橋駅は、比較的、手つかずの土地が残っている。
駅前ロータリーを整備し、人の回遊が新たに生まれている。
中でも楽しみなのが、ららぽーとや巨大物流倉庫に隣接したところに、「ららアリーナ東京ベイ」が建設中である。プロバスケットボール(Bリーグ)の人気チームの「千葉ジェッツ」のホームアリーナになることが決まっている。
船橋市は、自治体を上げて、スピアーズやジェッツの応援をしている。
船橋に住む人や働く人にとって、応援したい地元プロスポーツチームがあるというのは、素晴らしいことである。
私も、広島に観光で訪れた際、広島市民のカープ愛を目の当たりにして、魅力的なまちづくりのヒントに、地元プロスポーツチームの存在は欠かせないことを痛感した。
スピアーズやジェッツと、物流倉庫城下町の船橋の今後を期待したい。
4.まとめ(宅建士の役割)
私自身、学生時代に民法を専攻した。
ゼミの教授は、宅建の資格をすすめてくれた。
しかし、不動産業界には進まず、貿易業界に身を置いた。
せっかく勉強をしたので、教授のいうとおり宅建にチャレンジ、社会人2年目で晴れて合格した。
それから四半世紀。自分が宅建試験に合格して、宅建士の資格を持っていることに何の意味があるのが、自問してみた。
親戚が亡くなる度に、相続の話が出てくる。
貿易業界では、倉庫さんとの打ち合わせは事欠かせない。
自分のアパートを賃貸したり、自宅を購入することになった。
こうした数々のシチュエーションで、宅建試験に裏付けれた不動産・民法学知識が約に立った。
そして、自分が住み働く地域への「まちづくり」に参画することも可能である。
「宅建は取っていて損はない資格です」教授の言葉が、身に染みるこの頃である。