通関士試験の勉強を始めたころ、私は「計算問題=苦手分野」だと感じていました。
文系出身で数字が得意ではなかったこともあり、インボイスや運賃、関税率の数字を並べられると頭が真っ白になったのです。
ところが、あるとき職場の先輩から「課税価格と関税額の基本だけ押さえれば得点源になる」とアドバイスを受けました。昼休みに先輩が使っていた小さな電卓を貸してくれて、「ここだけは絶対に落とすな」と言われたのを今でも覚えています。
その言葉に背中を押され、毎朝10分だけ計算練習を繰り返した結果、いつの間にか苦手意識が消え、本番では計算問題が得点の柱になりました。
この記事では、通関士試験の計算問題のうち、最初に押さえておくべき「課税価格」と「関税額」の計算方法をわかりやすく整理します。
計算問題は合否を分けるポイント
通関士試験における計算問題は、例年5〜6問前後が出題され、配点は20点前後と高めです。
しかも、出題範囲は「課税価格」「関税率」「消費税」「延滞税」「加算税」など幅広く、苦手分野にしてしまうと合格ラインを超えるのが難しくなります。
一方で、基本のパターンを覚えておけば確実に得点できる分野でもあります。
まずは「課税価格」と「関税額」――この2つを正しく理解することが第一歩です。
課税価格とは?
課税価格とは、輸入品に対して関税や消費税を計算するときの基礎となる金額のことです。
算出式はシンプルで、
課税価格 = 輸入取引価格(FOB)+加算要素
となります。
インボイスに記載されている価格は通常「FOB(本船渡し価格)」です。ここに以下のような加算要素を足して、最終的な課税価格を求めます。
- 運賃(Freight)
- 保険料(Insurance)
- 無償提供物品の価値(生産用の型や材料を輸入者が無償提供している場合)
- ロイヤルティ(特許料・商標使用料など)
このように、「CIF価格(Cost + Insurance + Freight)」が課税価格の基礎になると覚えておけば、迷うことはありません。
関税額の計算方法
課税価格が求まったら、次は関税額です。
基本式はとても簡単です。
関税額 = 課税価格 × 関税率
税率には主に次の3種類があります。
- 従価税:課税価格に一定の割合を掛ける(例:5%、10%など)
- 従量税:数量に応じて課税(例:1kgあたり100円)
- 複合税:従価税と従量税の組み合わせ
初学者はまず「従価税=掛け算」と覚えておきましょう。電卓さえあれば、複雑な知識がなくても対応できます。
消費税の計算(基礎レベル)
輸入品には関税だけでなく、消費税も課されます。ここで大切なのは、消費税の「課税標準」がどこにあるかという点です。
消費税額 = (課税価格 + 関税額) × 消費税率(10%)
つまり、課税価格に関税額を上乗せした金額が消費税の基礎になります。
よくあるミスは「関税額を加え忘れる」ことです。消費税は“関税込み”で計算される点に注意しましょう。
練習問題で理解を定着させよう
ここで、実際の数値を使って計算してみます。
条件
- インボイス価格:1,000,000円(FOB)
- 運賃:100,000円
- 保険料:10,000円
- 関税率:5%
- 消費税率:10%
解答手順
① 課税価格
1,000,000 + 100,000 + 10,000 = 1,110,000円
② 関税額
1,110,000 × 0.05 = 55,500円
③ 消費税額
(1,110,000 + 55,500) × 0.1 = 116,550円
このように、課税価格 → 関税額 → 消費税額 の順に進めていけば、どんな問題でも落ち着いて対応できます。
慣れれば電卓を使って1分もかかりません。
よくあるミスと注意点
通関士試験の計算問題でつまずく人には、共通するミスがあります。
- 国内調達費用の消費税を課税価格に入れてしまう
- 運賃や保険料を加算し忘れる
- 関税額を消費税の計算に入れ忘れる
計算自体は難しくありません。
失点の原因は「どの金額を含めるか」を間違える点にあります。
手順をきちんと覚え、問題を解くたびに確認する習慣をつけましょう。
まとめ:計算問題を得点源にする第一歩
今回のポイントを整理します。
- 課税価格 = FOB+加算要素(CIFベース)
- 関税額 = 課税価格 × 関税率
- 消費税 = (課税価格+関税額) × 税率
この3つのステップを確実にマスターすれば、計算問題の大半はクリアできます。
最初は時間がかかっても、繰り返し練習するうちにスピードと正確性が身につきます。
「計算問題は苦手」と感じていた私も、この基本式を覚えたことで大きく変わりました。
むしろ、**安定して得点できる“おいしい分野”**だと気づいたのです。
通関士試験の計算問題、まずはこの「課税価格」と「関税額」からしっかり押さえていきましょう。