社会人の学び直しが叫ばれる中、資格試験が注目されている。
国家資格のなかでも「通関士試験」も人気資格のひとつ。
しかしながら、「通関士」とは、何なのか、イメージがつかみにくいのも事実。
今回は、そんな「通関士」のお仕事や試験対策にスポットを当てたい。
1.通関士の仕事
通関士とは、貿易取引において、輸入者や輸出者の代理人として、税関に「輸入申告」「輸出申告」を行う仕事であり、輸入者や輸出者に代わって、検査を立ち会ったり、内容についての陳述を行う者である。
通関業者には、通関士が必要であり、通関手続きのプロフェッショナルと言える。
輸入申告や輸出申告は、事項が多岐にわたることから、専門知識が必要不可欠。
輸入の場合、関税、消費税などを納付することになるので、納税手続きも併せて行うことになる。(ちなみに、日本では、輸出の場合の関税は無税となる)
日本は、貿易立国であり、通関士の資格は、必要不可欠と言える。
通関業者はもちろん、貿易業に携わる、フォワダー(海貨業者)、物流、商社、メーカー、運輸、倉庫など、通関士の資格を取得するだけで一目置かれる存在になる。
一方、税理士や社労士(社会保険労務士)、フィナンシャルプランナー試験というように、個人で独立開業するのには、やや不向きである。(通関士が独立開業をしたという話は聞いたことがない)
一方、通関士は、取得してしまえば、欠格事由で剥奪されない限り、生涯にわたり、資格の効力を維持できるので、転職には有利かもしれない。
通関業者にとって、通関士の存在は必要不可欠な存在であるので、有資格者は、貿易業界では、一目置かれる存在である。(もっとも、どの資格にも言えることだが、資格がもっていれば万事大丈夫ということではなく、採用や転職などは、人物本位を評価されることもお忘れなく)
概して、独立志向が強いよりも、貿易業界に関心がある人というのが、通関士に向いているように思われる。
2.通関士試験対策
「好きこそモノの上手なれ」というけれど、たとえば、通関士を目指すなれば、「海の仕事」や「空の仕事」に就きたいという気持ちが強い方がいい。
港湾や空港で働きたいと思う人、船舶や飛行機、貨物列車やトラックなどが好きな人などが向いている。
試験内容は、関税法、関税定率法、通関業法、輸出入申告書の作成など、通関士として必要不可欠な法律知識が出題になる。
もちろんこうした国家資格では、勉強は勉強として割り切った方もいいかもしれないが、動機づけは強い方が、挫折が少ない。
(その意味で、法律云々よりも、まずは、通関のプロとなって、海や空の仕事で働く自分をイメージすることが大切である)
一度、合格さえすれば、資格としては一生安泰だが、世の中の変化は目まぐるしいので、周辺手続きや知識の更新は、一生続くという覚悟で臨んでもらいたい。
(たとえば、電子納付やQRコードによるスマホ申告など、テクノロジーの進展により、通関手続きも大きく更新されることが多々あるため)
通関手続きのイメージをつかめれば、独学でも十分可能。特に、大型書店などでは、通関士試験の参考書や問題集が充実している。
普段、貿易取引業務に携わっている人ならば、通関手続きがどんなものか思い浮かべることができる。でも、そうでない人でも、海外旅行の別送品申告、免税品購入や、通販などで国際宅配便や国際郵便などを実際に利用することで、その背後にある「関税法関連知識」の関心を寄せることも、通関士試験の対策としての一考である。
机に向かって、黙々と関連法規の勉強をしているだけでは、継続が難しい。なんらかの刺激が欲しいのであれば、自分が実際に欲しい者を輸入し、不要なものを輸出したりして、通関のイメージを明確にさせてみよう。
新聞を良く読み、貿易動向、国際状況、密輸出入事件なども関心を寄せるなど、常に世の中のアンテナを張ることで、机に向かう法律勉強にはびこる「挫折の罠」を断ち切る工夫をしてみよう。
3.合格後のステップアップ
通関士を合格したら、それだけで付加価値のある人材である。
しかし、通関士の合格に安泰することなく、併せて「プラスアルファ」の資格にチャレンジしよう。通関士と「もうひとつ」の相乗効果で、スキルの掛け算となり、唯一無比の存在を目指そう。
たとえば、持っていて損はない資格に、英語のTOEICと、パソコンのMSーMOS(ワード、エクセル)の二つがある。
まずは、TOEICについて。
通関書類の基本言語は「英語」である。
だから、英語は出来て当たり前という風潮はある。
(もっとも、通関士は、英語が不可欠という意味ではない。英語ができるに越したことがない、という位置づけである)
通関書類は文書のやり取りがほとんどであり、また、海外とのやりとりも、現在は、Eメールが主流になっているので、英語の「読む力」は必須である。
TOEICでいえば、L&Rテスト、スコアは、出来れば730点以上、最低でも600点以上は目指したい。
600点なれば、公式問題集と関連参考書などを使えば、独学でも十分取得可能です。
英語とともに、パソコンの知識も必要なスキルである。
通関業界では、エクセルが主流。(通関手続きに添付される計算書類が、エクセルで作成されていることがほとんどなので、エクセルの知識は押さえておきたい)
マイクロソフト社が実施しているMOSのスペシャリストで、エクセル(併せて、ワードも)取得しておけば、スキルの証明になる。
かつて商い者は「読み、書き、そろばん」、さしずめ現在では、「英語とパソコン」は社会人のたしなみとして汎用性の高いスキルである。
通関士を目指す人にとっても「英語とパソコンのスキル」は、併せて意識しておいて損はない。
4.最後に(勉強はつづく)
通関士も取得したし、英語やパソコンもそこそこできるようになった。
更に「差別化」を図りたい人にとっては、日商簿記3級、貿易実務検定C級など、その次の次の資格取得もおススメ。
けれども、資格ばかりに夢中になって、実践の経験をなかなか進まないのは、本末転倒なので、そのあたりのバランス感覚は、常に意識しておこう。
通関士を目指すことで「勉強の習慣」が身についたら、ぜひとも合格後も、勉強を継続して欲しい、
英語なりパソコンなり、関連した勉強を常に継続するよう心掛けよう。
通関士の合格の秘訣は、毎日の「勉強習慣」の確立にあるのだから…。