「貿易立国・日本」のエキスパート資格
通関士は、メーカーや小売業に代わって、輸出入手続きを代行する専門職である。
弁護士や税理士といった「独立開業の夢」には、程遠いかもしれないが、グローバル化が進む今、どんな業界においても「通関士」は、喉から手が欲しい人材である。
英語(TOEIC)、や会計(簿記)といった資格のみならず、通関士を持っているということだけで、それはひとつの「個性」となり「売り」となる。
ただし、その道は険しい。
独学でも大丈夫であるが、試験対策にはある程度のコツが必要である。
ここでは、あまりお金をかけたくなくて、それでも「通関士試験」に勝利したい人へのロードマップを紹介する。
1.参考書は「通関士試験の指針」
まずもって、試験対策には、基軸となる参考書が必要である。
大型書店にいけば、多種多様な参考書が売られている。
もちろんそれぞれ手に取り、自分の気に入った参考書・解説書を購入すればいいが、確実に、通関士試験の勝利をたぐり寄せるために、私がおススメしたいのは、
・通関士試験の指針(日本関税協会)である。
定価は、2022年9月現在、6,380円。
あまりにも高額で、ここで躊躇してしまう人も多いだろう。
しかし、本気で通関士を目指すなら、「関税六法」、「関税関係基本通達」、「実行関税率表(タリフ)」の三点セットを揃えなくてはならない。
この三点セットを揃えようとすれば、4万円では効かないし、ボリュームも半端ない。もちろん、いずれプロの通関士として食っていくだけの覚悟があり、何事もカタチから入りたい人には、「三点セット」を揃えるのもいいだろう。
しかし、「とりあえず通関士でも合格しておきたい」という程度でれば、三点セットの中から、通関士試験の内容に特化した「いいところどり」の、「通関士試験の指針」が良いだろう。
特に、数ある出版社の中でも、「日本関税協会」が他を凌駕するのは、関税六法をはじめとする「三点セット」を作成、販売している出版社と同じだからである。
通関業者、監督官庁である税関も、日本関税協会が出版する数々の書籍や文献を使用していることから、信頼性も抜群である。
特に独学で通関士を目指したい人にとっては、「挫折をしない」ということが大事である。通関士の通信講座などでは、いきなり「関税六法」を販売、配布することからはじまることが多いが、インデックス・シールを貼って満足し、勉強を挫折してしまう人が後を絶たないようである。
2.過去問は「貿易と関税12月号」
過去問を制するものは、試験を制す。
独学の通関士を目指す人にとっては、参考書と共に、過去問題集が必須であろう。
市販されている過去問題集でもいいが、なるべくお金をかけずに、通関士試験の過去問を手に入れる方法がある。
日本関税協会が発行する「貿易と関税」という月刊誌がある。
毎年、12月号になると、その年に開催された「通関士試験」の「問題と解説」が掲載されるので、これを利用しない手はない。
まず、いきなり通関士試験対策に入る前に、実際の「試験問題」を一読することをおすすめしたい。試験には、向き、不向きがあるので、パラパラと内容を見て、「やっぱ私にはムリだわ」と思えたら、あきらめることも大事である。
人生は一度しかないし、時間は限りがある。
好きになれない試験に時間なんかを割いている場合ではない。
逆に、過去問を見て、「これならなんとかなりそうだな…」と思えたら、それは大いにチャンスである。
雑誌「貿易と関税」は、内容がガチガチに堅く、読み物としては、決して面白くはないが、日本で唯一、「貿易と通関手続き」に特化した専門月刊紙である。
通関士になりたい人は、問題掲載の12月のみならず、定期購読して、自分磨きを励んでみてはどうだろう。
いきなり関税六法や基本通達集、タリフなどを手にすると、その圧倒的なボリュームに思わず逃げ出したくなる人もいるが、毎月の月刊誌程度ならば、挫折も少なく、そして、ビビットでタイムリーな「貿易ネタ」を仕入れることになるので、通関士の勉強のモチベーションにつながること請け負いである。
3,まとめ(通関士試験に際して)
「通関士さえ合格すれば、一生、食うに困らない」
そんな時代は、とっくに過ぎ去っている。
しかし、通関業者にとっては、通関士の有資格者は、魅力的な人材である。
通関士の資格は、いちど合格さえしてしまえば、一生モノであるし、学歴や性別を問わない。
貿易関連資格の中でも唯一の「国家資格」であり、有資格者は、一目置かれる存在であろう。
ただし、試験が専門性であることや情報が少ない資格であるのも事実であるので、なんとなく興味を持っても、挫折してしまうことも多い。
自分に向いている参考書や問題集を見つけられれば、それに越したことはない。
いかんせんアイテム集が少ないのも事実である。
そんな方には、少々、値段は割高だが、発行元が「日本関税協会」であれば、おそらく、通関士に関しては、間違いない書籍選びになることだろう。
日本関税協会の回し者ではないが、貿易従事者として、数々の通関士試験チャレンジャーを見て来た経験からすれば、結果的にコスパが良い選択だと思う。