通関士試験の王道「日本関税協会」書籍
通関士にチャレンジするには、日本関税協会が発行する参考集。問題集を軸足に据えることで間違いがない。
そもそも日本関税協会は、通関士を目指す学習者へのサポートが充実。
50年近い実績に裏付けらた「通関士対策」の老舗である。
何から手を付けていいかわからないという人のためには、
・通関士試験の指針
・計算問題ドリル
・関税評価ドリル
・ゼロからの申告書
・問題・解説集
この5つは揃えてもらいたい。
出費がかなりかさむものの、これらの教材を効率的に利用することで、合格は間違いない。自己投資だと思って、身銭を切ろう。
1.通関士試験の指針
まずもって、手に入れるべき基本参考書は、「通関士試験の指針」である。
分厚くて、値段もそれなりにする。けれども、出題範囲の広い通関士試験の項目を、まんべんなく掲載しているので、まずは、これを学習の基本にしよう。
毎日、少しずつ読みこなしていき、試験特有の専門用語や法体系を学んでいこう。
初心者はそのボリュームに圧倒されるかもしれない。
でも通関実務務者は、もっと分厚くて難解な「関税六法」「関税関係基本通達集」「実行関税率表(タリフ)」を、それこそ「飯のタネ」のように読みこなしていくようになる。
通関業者やフォワダー(貨物運送会社)などで働いている人は、事務所に「六法、通達、タリフ」の三点は完備されているので、どんなものか興味を持ってみよう。
ベテランの通関士講師では、六法、通達、タリフの三点セットは、揃えるべきだと言及するかもしれないが、それは現実的ではない。プロの通関士や税関職員(監督官庁)だって、六法のタリフを「隅から隅まで」読んでいるわけではない。
まずは、「通関士の指針」で、関税法(関連法規含む)の法体系を学び、通関士試験に合格しよう。
六法等のたぐいは、通関士が合格してからで大丈夫です。
2.計算問題ドリル
通関士試験合格者として、計算問題を苦手とする人が多い。
課税標準(税額の基礎となる額)に税率をかけて、関税を出す。課税標準は、千円未満を切り捨てだし、関税額は、百円未満を切り捨て。
さらに、消費税は、「切り捨てない」課税標準に「端数処理済み(百円未満切り捨て)」の関税額を足した額から、消費税率(食品等の場合は軽減税率)をかける。さらに百円未満の消費税から一定の数式で地方消費税を出す。
こうした一連の計算方法や端数処理は、身をもって覚えるしかない。
実務上は電子申告(NACCS)によって自動計算されているけれど、どういう理屈で関税額、消費税額が決まるのか、一連のトレーニングが必要である。
正直、これは、私は今でも苦手である。電子申告任せにしてしまっていると、計算方法がどうなっていたのか、はっきりと覚えている自身がない。
そんな実務者も、いまでも「計算問題ドリル」を愛用している。
関税、消費税のみならず、修正申告(少ない税悪を積み増す)、厚生の請求(多い税額を還付してもらう)、延滞税(時間が経ってからの納付額に積み増す利子)、加算税(正しい申告をしなかったことへのペナルティ)など、誰も教えてくれないし、今さら聞けない計算問題が、基礎から上級レベルまで掲載されている。
通関士試験に挑戦する人は、計算方法に苦手意識を持たないためにも、ぜひ手に入れたい一冊である。
3.関税評価ドリル
評価とは、課税標準(税額を求める基礎となる額)を出すための計算式です。
課税標準とは、「現実支払い価格」に「加算要素」を加えた額。現実支払い価格は、貨物の実際の取引額で、通常、インボイス(レシートのようなもの)価格がそのまま現実支払い価格となる。
一方、貿易取引というのは複雑で、たとえば、A国から衣類を輸入する場合、その生地を別建て日本からA国に輸出している場合あがあります。その場合、特に減税や免税の手続きをしていない場合、課税価格に含めることとされます。これを加算要素といい、この額を確定させることを「評価」と呼びます。
計算問題と同様、評価申告というのも、実務上、重要な手続きであり、通関士試験にも出題されます。
特に通関士ビギナーにとっては、難解でわかりにくいとされる評価を、「関税評価ドリル」でトレーニングすることで、評価の苦手意識を失くしてしまいましょう。
4.ゼロからの申告書
輸出入申告の作成問題は、通関士試験のラスボス(クライマックス)ともいえます。
配点も高いことから、確実に抑えておきたいところです。
これは、実際に輸出入者に代わって、通関士が税関へ提出する輸出入申告書を問う問題です。
申告書問題は、いわゆる「ひっかけ問題」が少なく、オーソドックスな出題がほとんどなので、実際に「ゼロからの申告書」で、申告書作成を学びましょう。
通関士になると、輸出入申告書を作成する業務が軸となりますので、しっかりと基礎から学んでいきましょう。
関税がかからない輸出の方が、やさしいので、最初は輸出申告からチャレンジしていき、申告に慣れたら、納税申告を併せ持つ輸入申告に取り掛かりましょう。
申告書作成の上達法は「慣れ」につきます。
通関士試験とは直接関係ありませんが、「ふるさと納税」とか「所得税の医療費控除」など、面倒くさいと思わず、常日頃から税に関する手続きに慣れておくことをおすすめします。
通関業とは無縁の人には、勉強だと思って、実際に、電子商取引で「輸入申告」をしてみてはいかがでしょうか。
通関業者国際宅配業者に頼らず、個人であれば、自分でも通関はできます。
船卸しから保税倉庫に搬入、輸入申告から貨物引き取りまで一貫して自分で行う。
通関の流れが学習でき、通関手数料も抑えられて一石二鳥です。
5.問題・解説集
過去問を制すものは試験を制すといいます。
通関士試験の過去問題も、日本海税協会が発行するものをおすすめします。
本番直前の腕試しにも最適です。
通関士は年1回開催なので、あらかじめ受験日を決めて、そこから逆算して学習計画を立てていきましょう。
毎日の勉強、たとえば、普段は「指針」や「ドリル」をやり、月末の休日には、一発奮起して、本番さながら、過去問題を使った「模擬試験」にチャレンジするのも良いでしょう。
通関士試験は長丁場です。
いかに挫折をしないか、その仕組みを考えていきましょう。
知識の土台ができていないウチから、「問題・解説集」をやるのは、おすすめできません。
ビギナーは、できなくて当然です。出来の悪さの失望して、挫折してしまうのは、一番、もったいないことです。
繰り返しになりますが、まずは「指針」や「ドリル」で、しっかりと通関士の体力をつけてから、過去問にチャレンジしましょう。
6.まとめ(通関士合格の秘訣)
通関士は、「たった数カ月で合格」とか「これだけで合格」というような、テクニックだけで受かる試験ではありません。
粘り強く、一歩一歩、着実に力をつけた者が、合格という勝利を手に入れることができます。
どんな参考書や問題集よりは、まずは、なぜ通関士試験に合格したいのか、その動機づけをはっきりさせましょう。
通関業者に就職・転職して通関士として活躍するイメージ。
職場で、通関に明るい人材として周囲から羨望のまなざしを受ける。
副業に輸出入ビジネスを考えているので、越境取引に強くなりたい。
そうした強いイメージが、通関士試験の合格を引き寄せるのです。
そのためには、地道な努力が必要です。
日本関税協会の通関士関連書籍は、そうした、地道な努力を惜しまない人への応援するための参考書、問題集が豊富に揃っています。