【貿易】通関士試験に「挫折する人」と「合格する人」

(はじめに)通関士に「挫折する人」と「合格する人」

第58回通関試験の願書が交付された。
試験実施日が、2024年10月6日(日)なので、いよいよ勝負の3カ月を切った。
せっかく願書を取り寄せたものの、通関士試験勉強に挫折する人も散見させる。
通関士試験に「挫折する人」と「合格する人」には、興味深い共通点がある。
・「関税六法」のインデックスシール
・直感と常識がモノを言う
・弱点補強の見極め
この三つが、通関士試験に勝利するためのポイントとなる。
以下、「挫折するタイプ」と「合格するタイプ」を、貿易業界に30年携わった私が、まったくの独断と偏見の立場から述べてみたいと思う。

1.「関税六法」のインデックスシールは貼るな!

通関士試験にチャレンジしたものの、挫折した人の「関税六法」は、意外にも、インデックスシールが「ぴっちり」と貼られている。
一方、合格する人は、インデックスシールは、必要最低限の箇所しか張られていない。
六法だけみれば、「挫折する人」に軍配があがりそうである。
でも、これには深い訳がある。
ちなみに関税六法とは、通関士の「メシのタネ」というべき通関実務に特化した法律集であり、関税基本通達と共に、通関士にとってのバイブル的存在である。
もちろん、関税六法は高いので、入手することなく、試験に合格できれば、それに越したことはない。
通関士試験に挫折する人は、概して、「全部の法律」について、きちんとインデックスシールを貼らないと気が済まないのである。
そして、シールを貼り終わると、それだけで満足してしまうのである。
問題は、インデックスシールの有無ではなく、内容である。
私は、インデックスをあまり使わず、自分が合格した通関士試験に際しては、「関税法」「関税定率法」「関税暫定措置法」「通関業法」のせいぜい4つまでにした。
あとは、累出条文ページには、別途、「ふせん」を貼ることにした。
分厚い関税六法を見るだけでもウンザリしてしまうのに、こまめに法律毎のインデックスシール(六法に在中)を貼る暇があったら、実用的な試験対策に特化した方がいい。

2.通関士試験対策は法解釈よりも「直感と常識」を重視せよ

法解釈にこだわる人よりも、とりあえず直感とか常識のモノサシで事案に取り組む方が、挫折する人が少ない気がしてならない。
通関士試験対策だろうと実際の通関実務だろうと「法律の解釈」とか「根拠」にこだわる人は、どうも、試験には苦労するようである。
「直感」や「常識」で通関士試験問題が「飲み込める」という人は、そもそも、理解ができている人である。
弁護士の知人から聞いた話であるが、その人にいわせると「司法試験は別に難しくない。常識を問われていることだがら…」とサラリといっていたのが印象的だった。
司法試験のみならず、あらゆる資格試験にも言えそうなことである。
これは、通関士試験に合格して、法律実務や貿易業務のプロを目指す方は、職場の先輩から「根拠は何だ?」と言われるが、「根拠」を振りかざす人間(先輩?)にロクなヤツはいない、というのが、30年以上、この業界で勤めてきた私が思う率直な気持ちである。
通関士試験は、関税法や通関業法の「重箱のスミ」をつつくような問題ではない。
そこには、直感と常識の尺度がモノをいう出題形式である。
そもそも「常識とかけなられている」のならば、ほとんどが「法改正」されているはずなので、やみくもにに「法律条文」とか「通達の規定」に縛られる必要はない。
どうも「法律解釈」や「根拠」にこだわる人間は、プライドが叩く、面白味もない「勉強」に対峙するあまり、自分の思い通りにならないとなると、通関士受験を「ご卒業」されていく人が多いようである。

3.通関士試験の自分の弱点を知り対策を練る

通関士試験において、合否のカギとなるのが、輸出入申告書の作成である。
特に、通関業務に携わっていない人にとっては、「なんのこっちゃ」という話である。
こればっかりは、実際に「輸入申告」や「輸出申告」をしないとわからない。
国税庁が主管する「確定申告」との親和性があれば良いのだが、どうも、「確定申告」と「輸出入申告」は別物と考えたほうが身のためである。
申告問題のキモとなるのは、「品目分類」「関税評価」「計算問題」の三つ。
いくら「直感と常識で対峙せよ」といっても、この三つだけは、トレーニングが必要である。
「品目分類」も、HSコード(あやゆる貨物は、この品目コードによって「分類」される)を理解する必要があるが、実際の通関士試験では、実務家がクビをひねるような難解問題は出題されず、オーソドックスな品目が出題されているようである。
蛇足ながら、かつて、輸入実務に携わっていた方から聞いた話を紹介する。
怪物くんのキャラクター人形を輸入することがあったが、「怪物くん」「ドラキュラ」「フランケン」の3体に対して、「オオカミ男」だけは、関税率が低く設定されていたことに驚いたという。
当時の税関曰く、「怪物くん・ドラキュラ・フランケン」は人を模している「人形」に分類されるが、「オオカミ男」は、動物を模した「ぬいぐるみ」に分類されるというのが、その理由らしい。
(人形は国内産業保護の名目から、当時は、「ぬいぐるみ」よりも関税率が高く設定されていた)
「品目分類」の勉強に際して、とても興味深いアプローチであり、こういうエピソードは、地味な勉強を楽しくさせてくれる。
それはとも角、日本関税協会の教材では、特に「関税評価」と「計算問題」に特化したドリルがあるので、それをとことん利用する必要がある。
「評価」と「計算」は、「習うより慣れろ」ということである。

4.通関士試験に「挫折する人」と合格する人」のまとめ

以上のように、通関士試験を挫折する人と合格する人の違いは、
・関税六法のインデックスにメリハリをつけること
・法律の根拠・解釈よりも直感や常識に重きを置くこと
・「分類」「評価」「計算」を弱点にしないこと
 この三点に絞られる。
「通関士試験」という航海にチャレンジしたと決めたなら、ぜひ座礁せず、合格という「最終仕向港」にたどり着いてもらいたい。

タイトルとURLをコピーしました