30年以上、貿易ビジネスに身を置く私。
これまでの経験上、有益と思った「資格」は、三つしかない。
・通関士
・TOEIC
・第三の資格(宅建)
貿易業界で、いかに生存していくか。
そのためには、どんな資格がいいか?
以下、貿易従事者におススメしたい三つの資格を深堀りしていきたい。
1.通関士
貿易事務、具体的には「輸出入の手続き」の唯一の国家資格が「通関士」である。
別に「国家資格」が「民間資格」よりも優れているとか、そういうつもりはないけれど、ビジネスをやって来た「皮膚感覚」として、やはり「国家資格」というのは、スキルを証明するときに絶大なチカラを発揮する。
貿易業界に身を置く者として「ラス・ボス」的存在である「通関士試験」は、最初に倒しておくべき「大敵」である。
コイツ(通関士試験)を早いうちから合格しておくと、後々の展開が楽である。
若いうちは、比較的、頭が柔らかいので、いったん貿易業界、通関業界、国際物流業界などに身を置いたら、真っ先にチャレンジしてもらいたい。
TOEICや英検などの「英語系資格」を先に手をつける人もいるが、(同時並行が望ましいものの)、戦略的には「通関士」を先に合格しておいて、余裕があれば、じっくりTOEICのスコアアップを図った方が戦略的には、その後の展開が「楽」である。
気をつけなればいけないことは、「通関士の合格」をゴールにしないこと。
通関士に合格することで、「あぐら」をかいたり、他の同僚を「見下す」人がたまにみかけるが、それはいただけない。
あくまでも、通関士試験は、貿易ビジネスの一里塚であるので、いつまでも謙虚な気持ちを持って仕事に取り組もう。
2.TOEIC
貿易従事者が必要なスキル、それはなんといっても「英語力」である。
なにしろ貿易関係の書類は、ほとんどが「英語」で書かれているものであるし、貿易ビジネス自体が、海外とのやり取り(国際コミュニケーション)で成り立っているので、それを証明する英語スキル、具体的にはTOEC L&Rテストで一定のスコアを証明しておくことが肝要である。
ではどのくらいのTOEICスコアが必要か?
貿易業界では、可能ならば730点、最低でも600点は欲しいところ。
730点があれば、語学研修、海外出張、海外赴任の道が開けてくることであり、その後の選択余地が広がる。
もちろんTOEICスコアは「高い」に越したことはないのだが、ネイティブ英語を使うのならまだしも、日本国内の貿易業界で、普段も「日本語」による意思疎通を主とする業態であれば、とりあえずTOEIC600~730点くらいあれば「御の字」である。
中には、900点以上の「つわもの」がいるが、そういう人は、「英語一択」で歩んで人が多いので、こちらも、高い英語力に「あぐら」をかいて、(周りからチヤホヤされるのを誤信して…)肩透かしをくらう人材もいるようである。
TOEICの場合は、持っていて「損」でないので、今後、貿易ビジネスから、他の業態へ「転職」するにも有利であるので、視野が広がること間違いなし。
TOEICも600点くらいになってくると、英語を使う仕事が面白くなってくる。
更に、貿易業界では、「英語の勉強」自体は、「遊び」ではない。
仕事中であるのにもかかわらず、マンガやゲームに熱中していては、褒められた話ではないが、英語になると、話は別。なにしろ貿易書類は英語なのだから、日常業務において、勉強できる手はない。
さらに、TOEICスコアは、ゲーム性があるので、スコアに一喜一憂することが、「楽しみ」でもある。そうなればしめたもの。会社や家族の迷惑のかからない程度に、「趣味と実益」を兼ねたTOEIC試験のスコアアップを貿易従事者におススメしたい。
3.第三の資格(宅建士)
さて、ここまでは、通関士、TOEICと、ある意味、貿易ビジネスの「王道」を行く資格を取り上げた。
ここで第三の資格にもチャレンジしてみたい。
パソコンのスキルアップのMOSスペシャリスト、貿易業務の民間資格「貿易実務検定」などの展開がありそうだが、やはり「生存戦略」を意識するためには、第三の資格は、アナタの個性が生きる資格(他の代替が効かないユニークな資格)の勉強をおススメしたい。
私は、宅建試験に合格し、宅建資格のメリットを貿易業界の中で「ウリ」としてきた。
「貿易業界に宅建試験?何いってんの、コイツ!」
そんな苦言もあるかもしれない。
あくまでも私は、宅建にチャレンジしてきた。
それは、モノポリーゲームが好きだったとか、学生時代、区分所有権法(マンション法)の卒業論文を書いたとか、そういう意味で、自分の人生を掘り下げてきたら、たまたま掘りあてたのが「不動産」というキーワード。そこで宅建試験にもチャレンジし、結果を出してきた。
だから貿易業界に身を置く者にとって「宅建合格者」は稀有な存在だったので、それが個性となり、それほど努力をしないでも、一定の個性を出せるようになった。
通関士と宅建士のダブルマスターならご存知かもしれないが、実は、試験科目の「通関業法」と「宅建業法」は、とても構造が似ている。
また、通関業者と通関士の関係は、宅建業者の宅建士の関係とほぼ同じ構造なので、通関士と宅建士の「類似性」があることは、意外と知られていない。
私の場合は、宅建士だったが、別に宅建士に限らず、通関士、TOEICで一定の成果を得たら、今度は、あえて「貿易や通関を離れてつつ、一定の社会的評価がある資格」を目指すのもいいかもしれない。
特に宅建の場合、民法(権利関係)の知識が増え、貿易ビジネスにおいても、国際物流倉庫さんとの仕事で「土地や建物の登記簿が読める人材」として、とても重宝がられた経験がある。
4.まとめ
貿易業界で30年、メシを食ってきて人間が、実際に役立った資格は、この三つ。
・通関士
・TOEIC
・宅建
貿易実務のハクづけとしての「通関士」、国際グローバルビジネスのデフォルトとしての「TOEIC」、そして、自分らしさを引き立たせるための「宅建」。
「通関士×TOEIC×宅建」
このスキルの三乗が、ある時は、ドン底から這い上がるための「魔法の道具」となったのも事実である。
勉強は一生つづくものと覚悟を決めて、ぜひ、アナタ自身の資格の掛け算をカスタマイズしてもらいたい。